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宮崎  季喜

【短歌50首】東北を主題に作る

大津波 堪えて残りし 松一本 わくらば耐えて 春芽をふくか
警報を 聞いていながら 談笑を 交わす人あり 津波あなどる
孤立した 部落行政 届かずと 物資輸送の 道切り開く
仙台を 旅して思う この不思議 稲荷を囲う 松は残りし
釘づけに なりてテレビの 画像見て 津波の恐怖 思い知らさる
復興の ダンプの動き 激しけり 残骸の山 少しも減らず
仙台の 青葉区尋ね 見た海は 凪ぎて静かに 大津波を知る
見る限り 土台残りし 家々の 復興願う 道の険しさ
松島や アア松島や と歌われし 幼貝の育ち 寸時も早く
原発の 事故の責任 先送り 政治の軽さ さらけ見えたり
東北の 農民魚民 共々に この難局に しぶとさを見る
啄木や 賢治を生めし 陸奥の国 先駆を見習い 我も追うなり
警報を 聞いて車で 老人を 助け出さんと 我が身帰らず
あの時を 反省すれば 子は無事と 親は終生 重荷に悩む
黄金の 藤原の郷 省みて 古人の 知恵を探らん
大津波 いまだ帰らん 人の霊 この寒空の 何処を彷徨う
遙として 行方分からぬ 妻思う 二人で漁した 船もみだたる
急ぎ足 追い越し見れば 他人なり 後姿が 余りにもにてて
亡き妻の 新盆飾りし 実家より 送られ来る 写真はセピア
大津波 知らせん為に 稲束に 火放ち救った 古事に教わる
豊作の 稲を刈り取り 放棄する 農民魂 抉る行為ぞ
乗合わす 臨席の女 福島を 過ぎてハンカチ そっと目にする
東北の 各地に響く 杭打ちの 音は響けど 所詮仮宿
寒風も 一夜を過ぎて 収まりし 旅路の果ても 一日伸びたか
烈風の 音すざましく 眠れずに カーテン越しの 月は満月
二抱え 三抱えも有る 老松の 無残に折れた 姿ぞあわれ
我が身より いざという時 持出さん 先祖の位牌 包む風呂敷
原発の 仕組みも知らず おきた事故 この戦いは 世紀の戦い
大津波 退避、退避を 呼びかけし 使命に散った 女性は永久に
東北の 民は大らか 笑顔見せ 心の痛み 内に秘めおく
風評で 売れぬ品々 持ち帰る 野良着の袖で 目頭覆う
管理地に 入れぬ家族の 留守宅に 忍びて入り 物を持ち去る
無人の野 放たれた牛 雪の中 最終処分 心痛める
流されて 流されてゆく 夫の身 妻は伏し目で 街を歩きぬ
雪の山 瓦礫は其の下 知りつつも 他の災害の 無きにしも非ず
猛吹雪 地鳴りを共に 吹き荒ぶ 原発問題 セシウム飛ぶか
水門の 開閉確かめ 立ち返る 尊き命 亡くした人有り
地震國 最悪の結果 残したが 語り続けて 其の灯絶やさず
予想外 物事全て かたずけば 科学の進歩 なきに等しく
原発の 神話崩れし 福島を 手本にすべし 自治体政治
起きたこと 仕方が無いと 思わずに 子孫は残る 千年後も
日本を 愛でし愛した カーン博士 一言一句の 言葉は重し
年明けて 東北林檎 さくらんぼ 桃に葡萄よ 豊かに実れ
春来れば 早苗の緑 鮮やかに 雲雀鳴く声 高らかに響け
夏来れば 蛙鳴きし田 蝶は群れ 里山近く カッコウは鳴く
秋来れば 田は黄金の 波をうち 野良着の女 座る間もなし
冬来れば 秋の収穫 神捧げ 正月待つ子 指折り数える
夜来れば 祖母の民話を 炬燵で聞く 越後生まれは 東北と変わらず
我が生まれ 一山越せば 会津の地 雪国の暮らし 越後と変わらず
戦国の 上杉、会津に 米沢に 歴史は残る 絆は強し

宮崎  季喜

みずたまの記・翠瞳

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